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人はなぜそこまで利他できるのか- プロジェクトXで中村哲医師さんの特集が良かった

プロジェクトXで、アフガニスタンで医療や用水路を作った中村哲さんの会があってとても良かった

&raquo 中村哲医師の功績を称える「新プロジェクトX」に感動の声(2025/12/06)|SNSのバズまとめ – Yahoo!リアルタイム検索

当時、中村哲医師がなくなったことを新聞で拝見してとても悲しい気持ちになったのを覚えています。
改めて今回、映像で拝見しすごい人だなと思うこと

  • 国籍を問わずに、「困ってる人を助ける」という姿勢。人って属性が近ければ近いほど親近感を持ち、助けようとする(例:学校が同じ、出身が同じ)。そういう観点では、他国の人は、少し遠いため、自分を犠牲にしてでも助けようとする姿勢は持ちにくいのに、「この人たちが困っている」という一点だけで、それを実行する姿勢
  • 「世界がどうとか、国際貢献がどうとかに煩わされてはいけない。出会った人、出会った出来事の中で、人として最善を尽くすことではないか。」という発言をされていたとのことで、大きな社会貢献とかの前に目の前の人を助けるんだという一貫した哲学
  • 死ぬことを恐れないスタンス(死んでもXXということは常に言い続けていた。実際に、一緒にプロジェクトを推進していた日本人が殺された。率先して、川の危険な場所の工事にも取り組んでいた

私は「他の人のために犠牲になる」という概念にとても関心があって、生き物としては、それはなかなか選べない選択肢なのに、その選択肢をとられる方がいる。
ミスチルのHeroにも、以下の歌詞があるけれど、果たして、それができる人というのは、どういう思考・人なんだろうという思いが、強い尊敬・憧れとともにあったりする

例えば誰か一人の命と
引き換えに世界を救えるとして
僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男だ

なお、このアフガニスタンはほんとに治安がよくない国で、僕がいった時も、ヘラートからカブールに向かう時に、「この道で先週、外国人全員殺されたので、この道通らない方がいいよ」とか言われて。
その道はカブールに行くには、避けて通れない大きな道だから、わざわざ飛行機に乗り換えて移動した記憶があります。なおその飛行機も6時間くらい遅れて出発。

なお、最後のシーンで、中村哲さんに感謝するアフガニスタンの人々が町中で、彼の写真を掲載し、大統領、中村哲医師の棺桶を担ぐなど、国をあげての感謝を表現されているシーンは、異国の国の人でも、国をあげて感謝を捧げるシーンはそれはそれで涙をそそるものでした。

どういう人が自分を犠牲にしてまで世の中を救えるのか。
これをテーマにし研究もいくつかあり、たとえば、以下のような研究があります。

1) “非凡な利他”の実在サンプル(匿名の腎臓提供者など)から特徴を抽出
– 匿名の腎臓提供者(見返りほぼなし・リスクあり)を「極端利他」のモデルケースとして、性格・意思決定・道徳認知を比較した研究が多いです。
2) 「集団のために死ねる/戦える」を説明する: Identity Fusion
– “世界を救う”が「社会運動・国家・宗教・チーム」など集団のための自己犠牲を指す場合、中心理論の1つがIdentity fusionです。
3) 「正しいと思うことのために不利益を引き受ける」:Moral courage(道徳的勇気)
– 自己犠牲”が必ずしも命がけではなく、社会的コスト(職場での孤立・評価低下など)を伴う正義行動を指すなら、moral courage研究が近いです。
4) “英雄行動/高リスクな親切”をまとめたレビュー

なお、以下の研究によると、利他ができる人の可能性は以下とのことです

– 「自分にメリットがあるから利他的」というのではなく「他の人の幸せこそが良い(利他性の低さ)」が重要な因子の可能性があるそうです

>> 非利他的な特性と社会的意思決定パターンは、現実世界の並外れた利他主義者の6つの集団を特徴づける | Nature Communications