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サーチ・インサイド・ユアセルフを読んだ

サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法
チャディー・メン・タン ダニエル・ゴールマン(序文)
英治出版 (2016-05-17)
売り上げランキング: 3,559

Webで紹介されていた読んだ。だいぶ前に話題になってたような気がするけど、その時は「インサイドはサーチされたくないな」と思って読まなかった本。めっちゃ良かった。

ひとつ間違うとトンデモ系の本だけど、多少割り引いて読むとしても、あの合理主義的Googleも取り入れているということの説得力すごい。最近、マインドフルネスが流行ってるけどその源流の一冊ではないかしら。

>、脳の中の幸せの度合いを測定する方法がある。左の前頭前野と右の前頭前野の特定領域で活性化の度合いを比べればいい。左の前頭前野の活性化の度合いが相対的に高い人ほど、喜びや熱意、活力といったポジティブな情動を多く報告する

⇒ほんとかな?と思って、ざっとぐぐったら「吻側前部帯状回」というところらしい。面白い。幸せは測定できる

>マチウは、「マイクロエクスプレッション(微表情)」と呼ばれる、情動を瞬間的に表す顔の表情を感知する達人であることもわかった

⇒空気読む力の人は、表情を分析する力が高い

>さまざまな研究によって立証されているとおり、優秀さの要因としては純粋な知性や専門知識よりも情動面での能力のほうが二倍も重要だ

⇒この「2倍」という数字が面白い。データででてるんだ?

>卓越したリーダーを際立たせる能力の八〇~一〇〇パーセントを情動面での能力が占めるそうだ(

⇒マネージメントと管理職は違うにせよ、8割以上って、そこまで大半なのかしら。マネージメントに関しては以下のような話もあった

>管理職の成功を説明できる数々の要因を研究者たちが調べた。すると、管理職の上位四分の一と下位四分の一をはっきり分ける要因がひとつ、ただひとつだけあった……その唯一の要因とは、愛情──人を愛することと人から愛されたいという願望の両方──での得点の高さだった。

>マチウの経験では、幸せはトレーニングで身につけることのできる技能だ

⇒最近、幸せ科学系の本が多いけど、これはある程度、本当のようでR

>瞑想修行に長い時間をかけてきた達人ほど、扁桃体の活性の度合いは低かった。

⇒扁桃体は脅威をみつける部分。いわば、瞑想したら怖さが低減するとか。

>被験者たちが一〇枚めくったころに赤の組に対してストレス反応を起こし始めることを発見した。これは、赤の組はどうも良くないという気がすることを口に出せる四〇枚も前だ。さらに重要なことがある。手のひらに汗がにじんでくる、ちょうどそのころ、被験者の行動にも変化が現れだした。彼らはしだいに青の組を選び始めたのだ(18)。

⇒ここがめちゃめちゃおもしろかった。人間は自分が知覚する前に、なにか脅威を意識下で認識しているという話。

>注意とメタ注意の両方が強くなると、おもしろいことが起こる。心がしだいに集中し、安定するけれど、リラックスした形でそうなるのだ。

⇒瞑想のテクニック論とその効果

>幸せなのは心の基本設定状態だからだ、と。心は穏やかで明瞭になると、基本設定に戻る。

⇒ここも面白かった。脳は特定のインプットや偏りがない場合、幸せモードになる。

>平均的な実績をもつ人はたいてい、能力全般の査定で自分の長所を過大評価するのに対して、優れた実績をもつ人の場合、それは稀で、彼らはどちらかと言えば、過小評価しがちだった。自分に対して高い基準を課している証拠だろう(

⇒ほー

>思考や情動が湧き起こるのを防ぐことは不可能だということで意見が一致したという。

⇒ダライ・ラマ氏の発見。つまり脳をからっぽにするのは不可能。

>ひとつのネガティブな経験を乗り越えるにはポジティブな経験が三つ必要であることを発見した

⇒これはどこかでも読んだ

>人間の公平感はけっして見くびってはならないという教訓が得られる。その感覚は圧倒的であり、公平性のためには自分の利益を犠牲にすることさえよくあるのだ

面白いなー

見田 宗介氏の現代社会はどこに向かうかを読んだ

めちゃめちゃおもしろかった。東大の卒業式の告辞で引用されて気になって読んだ。東京大学名誉教授の本。近代とこれからをデータ(というには少し弱いけど)を元に分析した本

以下、引用

>「現代社会」の種々の矛盾に満ちた現象は、後に見るように、「高度成長」をなお追求しつづける慣性の力線と、安定平衡期に軟着陸しようとする力線との、拮抗するダイナミズムの種々層として統一的に把握することができる

⇒これは昭和の時代にあった「高度経済」の幻想(日本はこれからも成長できる)を今も引き続き持っている人と、リアル(現実的には成長要素は限られている)の拮抗を看破している素晴らしい一文。先日「安倍首相がよくない」という人は「本来ならばもっと日本は成長できたはずなのにできていない現実を非難しているが、その前提である『もっと成長できたはず』というのが幻想に過ぎない」という論調をみかけたことがあって、それに重なって、「なるほどなー」と思った。

>「軸の時代」の大胆な思考の冒険者たちが、世界の「無限」という真実にたじろぐことなく立ち向かって次の局面の思想とシステムを構築していったことと同じに、今人間はもういちど世界の「有限」という真実にたじろぐことなく立ち向かい、新しい局面を生きる思想とシステムを構築してゆかねばならない。

⇒近代が「世界は広い」という前提で、それを解き明かしていった(哲学とか経済学)。しかし、今は、「無限」というのは嘘で、環境であれ、成長であれ、フロンティアであれが限定的であるという前提に物事を考えないといけないという言葉を「たじろくことなく立ち向かい」と表現してるのがかっこE

>経済競争の強迫から解放された人類は、アートと文学と思想と科学の限りなく自由な創造と、友情と愛と子どもたちとの交歓と自然との交感の限りなく豊饒な感動とを、追求し、展開し、享受しつづけるだろう。

⇒上記の通り「経済成長はかならずも正しい未来ではない」と考えると、暗澹たる気持ちになるけれど、そうではなく「経済成長が善である」という前提さえも考え直して、「経済にとらわれない生き方を模索しないといけない」という話。その後、同じ意味合いで、以下のような文章も

>経済ということでいえば縮小であるが、人間の幸福ということでいえば、経済に依存しない幸福の領域の拡大ということである。

>これらの信や行動がこのまま長期的に増大しつづけるものかどうかは分からないが(たとえば「奇跡を信じる」は二〇〇八年に36%と大きく増大した後で、いくらか減少している)、それは少なくとも近代合理主義の示す世界像の絶対性のゆらぎを示すものであるように思える。

⇒1997年と2013年で「あの世を信じる人は16pt増えている(5%⇒21%)」「奇跡を信じる人は11ptアップ」「お守りなどの力を信じる人は17ptアップ」など、現代になり、いろいろなものが科学で解明されている今なのに、逆に「解明されていないもの」を信じる人が増えているというデータに対する示唆。おもしろーい

>西ヨーロッパ、北ヨーロッパを中心とする高度産業社会において、経済成長を完了した「高原期」に入った最初の三〇年位の間に、青年たちの幸福感は明確にかつ大幅に増大している。

⇒上記に関するけど、経済成長がとまったのにもかかわらず幸せな人は増えているというデータ。経済成長が必ずしも、幸福度と相関しないという話。おもしろーい

アントフィナンシャルを読んだ

アリペイの本。ジャックマーの闘争の歴史としてもめちゃめちゃおもしろかった

アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム
廉 薇 辺 慧 蘇 向輝 曹 鵬程
みすず書房
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以下、引用

>アリペイの報告に対し、人民銀行はいかなるフィードバックも行わなかったが、アリペイは報告書の提出をやめなかった。
⇒国にアリペイを認めてもらうために、勝手に報告書を送りまくった話

>システム崩壊まで残り4秒というところで、すべてのエンジニアがコードの最後の1行を打ち込み終えた。
>体調を崩しても前線から退かず、以前なら半月がかりで完成させていたプログラムを1、2日で形にしてい
⇒もはや戦争の記述を読んでいるような白熱感

>「今後競争にさらされたとしても、決して附和雷同してはなりません。他人には他人の考えがあり、ビジョンを実現するための道筋がある。他人のビジョンはわれわれとは違います。私たちは自分の道を着実に進むことに集中すべきであり、オンリーワンになり、独自の価値を創り出すことが最も重要なのです」。
⇒競合に対するジャックマーの方針発表。

>カスタマーサービスのストレスが20%低減され、取引量が短期的に70%も増えたことは売り手を驚かせた。
⇒ECに「返品送料保険」をつけたことの効果

>ゆえに、保険会社のデータ面の弱点を補うことができるのだ。
⇒インターネットでユーザのいろいろなデータをとれるようになり、いままで保険会社ができなかった細かいリスク算出ができるようになったという話

がん保険について読んだ

がん保険のカラクリ
がん保険のカラクリ
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文藝春秋 (2013-01-25)
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このあいだのSXSWに参加した時に「がんになった子供のためのロボット(アフラック)」を見た時に、「がんを勉強しよう」と思い立って本を読んだ。

※なぜなら日本人の死亡理由の1位は癌だから

保険に関して知らないことが多かったので、学び多し。特にデータを軸に説明されているのがわかりやすい。

>がんによって死亡する「確率」が高まったわけではない

⇒昨今、保険会社が言う「がんによる死亡は年々増加」に対するコピーへの反論。

これは高年齢の人が増えるに伴い、癌は高年齢と相関があるので、結果的に絶対数として癌の死亡が大きくなっているというだけの話。癌の死亡確率があがったわけではない

>まず、 30 歳の人が 10 年間でがんに罹患する確率は、男性0·5%、女性1%、40歳になると、10年間の罹患率は男性が2%、女性が3%。50歳からは男女ともに5%、60歳では男性が14%、女性が8%と急速に確率が高まる。70歳では男性が26%、女性が12%というから、かなりの人ががんに罹ることが分かる。

⇒自分が40歳男性だとすると、今後10年で癌になる可能性は2%。高くはないが、無視できる数字ではない。年間で負傷者を生む交通事故を起こす確率が0.7%なので、それよりは多い。

>がん治療費用は意外とかからない  以上、公的な医療保険制度

⇒「癌の治療にどれくらいかかると思う?」と聞いた場合、癌を経験した人とそうでない人の場合、経験したことない人の方が高くみつもったという話。実際は100万円以下のケースが多い

>保険とは「発生確率が低いが、起こるとダメージが大きい偶然の事故」に備えるために、大勢の人で少しずつ保険料を出し合うものである。したがって高齢になってから通常発生すると考えられる医療費(小さな医療リスクに備えるもの)は、一義的には誰しもが自分で備えるべき性質のもの

⇒岩瀬さんの保険哲学。