月別アーカイブ: 2016年4月

読んだ本「横道世之介」

横道世之介 (文春文庫)
横道世之介 (文春文庫)

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吉田 修一
文藝春秋 (2012-11-09)
売り上げランキング: 16,632

★★★★★

「いい本読んだ!」と思えた小説でした。吉田修一さんの本は、どれもはずれがない。

青春ものの物語で、大学のために上京してきた主人公の学生時代の物語。友情あり、恋愛あり。

ただ、通常の物語と違うのは、構成。この出来事はバブル期あたりの物語なのだが、そこの登場人物たちの「今」が、物語の合間に差し込まれる。つまり、大学生だった彼らの「数十年後」が垣間見れる仕組みになっている。

そこで「ん?」という出来事が起こり、時間を移動しながら、ぐいぐい物語に引きこまれていく。人物像も上手ければ構成もうまい。きっとあなたもこの登場人物の誰かに感情移入をし、あるいは、誰かに恋をすることでしょう。

最初は新聞か何かで連載されていたのかな。最後はその時と少し話が変わっているそうで。映画化もされたので、それがどのような最後になっているのかも気になるところ。

おすすめです。

Media Makerからブクログに移管

「長期休暇だ!」ということでしたくてもできてなかったことに着手しております(たとえばこのブログ投稿も)。

その1つとして、書籍管理のツール整理がありました。皆さんは、どのように「読みたい本」「読んだ本」を管理しているでしょうか?特に、読みたい本の管理はなかなか悩ましいです。

以前は、Amazonのカートに突っ込んでいたのですが、ある数量を超えたら消えてしまうという憂き目にあいました。思わず、Amazonに「助けて!」とメールしてしまったほどです。

それから、メディアマーカーで管理していました。ようは「読みたい本」とブックマークしておくのです。ただ、このメディアマーカーがえらい重たくなり、別での管理を検討していました。

「そうだ、本管理といえば、ブクログだ」ということで、ブクログへの移管をしようかと。しかし、データの移管はなかなか厄介です。

»読書記録をメディアマーカーからブクログへ移行しました

詳しくは上記が大枠の流れなのですが、いくつかはまったので、念のため流れを含めて、はまったポイントを共有します。

・メディアマーカーからリストをエクスポート
・そのリストをエクセルで開くとダブルクオーテーションがなくなるので注意
・ただ、エクセルでないと整理できないのがあるので、エクセルで開く
・エクセルの「ファイル読み込み」だと、タグの改行がバグるので、CSVを直接オープンにする方が無難
・そして、ブクログ用のフォーマットに順番を入れ替え
– なお「ASIN(アマゾン商品コード)」がブクログの「アイテムID」に該当します
・そして、入れ替えたものにもう一度、ダブルクオーテーションをつけないといけないので、エクセルの「A1&A2」みたいな感じで、ダブルクオーテーションを付け直す
・タグはカンマ区切りでOK
・場合によっては、カラムに謎の半角スペースがあるので、テキストエディタで削除
・そして、ブクログにインポート
・なお、タグの改行対策ですが、エクセルのセル内の改行削除は、Macだと「Ctrl+J」だと改行コードが違うようでできないので(Winならできる)、Macの場合は、関数の「Clean」を使って、改行を削った方が良さそうです。

ということで以下のように本棚が整理できました〜。

»本棚 (原田和英) – ブクログ

なお、ブクログはバーコードリーダで書籍登録ができるので、数百冊の登録でも一気に片が付きます。おすすめです。以下など参考。

»ええっUSB接続のバーコードリーダーって最近4725円なのォ!? – ケータイ Watch

読んだ本:失敗の本質

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
戸部 良一 寺本 義也 鎌田 伸一 杉之尾 孝生 村井 友秀 野中 郁次郎
中央公論社
売り上げランキング: 114

★★★

第二次世界大戦における6つの戦線を元に、タイトルの通り「失敗」の原因を探っていくという本、に限らない。それを元に、日本の組織とはどうあるべきか、という点も合わせて考えることができる書籍となっている。そういう点では、戦争の本にとどまらず、組織論に近い本となっている。

いくつかポイントはあるものの、もっとも大きな問いの1つに「日本的意思決定」が挙げられる。いわば、合議的ゆえに誰が意思決定がしたか不明瞭であり、責任範囲もうやむやなままに物事が決まっていくというものである。今回の戦争でも、そのような重要な意思決定がふわっとした形で決まり、ないし、決定しないゆえに、統一が取れない形で戦争が進んでいくという課題があった。

また、印象深いエピソードとしては、ある戦争において負けた者がいた。上司は、その者のリベンジとして別の戦争で、彼が戦える場を用意した。いわば、感情論の意思決定である。もちろん、これで勝てば良いエピソードとして残るのかもしれないが、それで数百、数千の命が関わることになる。本来的には、そのような1人の感情のために、意思決定は行なれるというようなことはあってはいけない。

このような今の日本の組織に照らし合わせて思い当たるところが少なからずあり、考える一助となる良書でした。

書評:リーダーシップからフォロワーシップへ

リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは
中竹竜二
CCCメディアハウス
売り上げランキング: 72,522

★★★

会社の研修でこの中竹さんの話を聞いた。フォローワーシップというマネージメントに関する概念だ。

マネージメントとはマネージする人とされる人によって成り立つものであり、そのマネージされる人をフォロワーという。そのフォロワーが自発的にいかにパフォーマンスをあげれるようにするかといった考え方である(※ ただし、このあたりは私自身、理解が曖昧なので、本当に正しいかどうかはわからない)。ポイントは「自発的」という点であり、その点は、いわゆる「人を率いるリーダーシップ」とは対局に位置する考え方である。このフォロワーシップのマネージメントの最たるところは「リーダーがいなくても回る」というものといえば、まだイメージは付きやすいかもしれない。もっとシンプル化してしまえば、トップダウンかボトムアップか、のボトムアップのイメージが近い。

この考え方は初めて聞いたのだが、自分自身マネージメントに悩むことも多かったので、この概念から考えさせられることが多かった。この考えでは、マネージする人は必ずしも下の者よりも能力が秀でている必要がない。もちろん、従来のリーダーシップの考え方でもその考え方はあるのだが(たとえば、リーダーはビジョンを指し示すのが仕事、と定義した場合はスキルは別の話になる)、ただ、これはそのようなふわっとした話よりも、もう少しスキルや能力とは別の汎用的な「フォロワーシップを育成するスキル」を求める。たとえば、この本ではその最たるものとして「メンバーのスタイルを確立させること」というものがある。それによって、全体最適かつ、個々がもっともパフォーマンスを上げることができる組織が出来上がる。一種のコーチングにも近いという印象を受けた。

このフォロワーシップの利点としては以下などがあるような気がした
・個々人の自立性が高まるので組織力がつく(組織の力がリーダ1人などに依存しない)
・適正に合わせた成長を重視するので、個人としてもパフォーマンスが発揮しやすい
・スキルによるマネージメントは、常にその組織がリーダーを超えないというジレンマがあるが、それを超える組織を生み出す

もちろん課題も多くあり
・そもそも、このフォロワーシップを作り出すスキルの難易度が高そう(口を出したりしすぎてはいけないし、個々人のことをかなりしっかり理解しないといけない)
・フォロワーとの関係性を気づいたり、フォロワー自身が失敗して学ぶなどを経る必要があるので時間がかかる(ベンチャーには向かない?)

印象としては、
・市場が流動的な業界(ITとか)
・それなりに離職率が低い
・それなりに時間をかけて人を育てる体力がある
といった会社で向いているのではないかな、という印象でした

読書レビュー:稲盛和夫 最後の闘い

久しぶりに読書レビューを。

稲盛和夫 最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生
大西 康之
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 36,199

評価:★★★★

会社の尊敬する方に進められて読んだ一冊。稲盛さんの本は自伝的なものは読んでいたが、こちらは未読なので拝読。

JALの再建を託され、いかに彼がそれを受け、戦い、そして勝ち抜いたかが記載されている。2010年にJALの会長に就任し、2013年3月31日までの1155日の戦いだ。会社更生法の適用を申請した時の負債総額は2.3兆。会社更生法の適応会社が再上場した割合は7%のみ。そこから2012年には2049億円の営業利益を産み、再上場をさせた。結果として、彼はJALを再建させた。ある種の奇跡とも言える事をなぜ成し遂げられたのか?

いくつかのポイントがあるにせよ、マクロな観点でいえば「社員の考え方を変えさせた」ということなのだろう。3万人もいる会社ゆえに、何人かが考え方が変わっても、物事は変わらない。そうでなく、3万人全員が考え方を変えるということを行い、物事は大きく動く。しかしながら、当然、考え方を変えさせるというような容易ではない。人は今までのやり方を踏襲するし、何よりパラシュートで上から降りてきた人の言うことは人間心理として聞きにくい。しかし、フィロソフィーや彼自身の働き方、個々の仕組みを変えることによる考え方へのインパクトなどあらゆる手段を通じて、彼はそれを実現した。それが、この改革の真骨頂だろう。

その考え方を変えさせた仕組みの1つがアメーバ経営という仕組みである。組織を1リーダーが見れる範囲(アメーバ)まで分類し、リーダやメンバーはその単位の数字を徹底的に把握する。そして、メンバー全員が「今日はもうかったかどうか」を把握する。それによって、メンバーは自分の考えで試行錯誤をすることができる。また、事業自体も自分ごと化できる。なお、この「数字の管理システム」の構築は、非常に難易度の高い仕組みであり、京セラでその仕組を立ち上げた担当者がJALにも参画した。

そしてアメーバ経営に欠かせないもう1つの仕組みが「ミッションや戦略、行動計画の明確化」である。そのような指針がなければ、メンバーも「どういうステップでどうすれば数字を達成できるか」が全社観点で最適なものとならない。個々の単位にミッションが明確にあるからこそ、あとはトップダウンではなく個々で動いても全体での齟齬がでない。ゆえに、個々の単位で機動的に動くための指針がミッションである。アメーバ経営は、この小規模な組織とミッション単位の明確な戦略、そして、正確な予実管理システムによって成り立っている。それによって、メンバー全員が「どうすれば目標を達成できるか」ということを考えられる自律的な組織が実現する。

この仕組は聞いただけだと「ふーむ」という印象だが、実際にそれが稼働している世界を見ると「なるほど」と腹に落ちることが多い。KDDIの強さの一端をそこに見ることができ、アメーバ経営の凄みを実感する日々。

最後に彼のエピソードをいくつか
・予算として承認されている10億円の予算執行を拒否。たとえ、それが予算として通っていても、担当者が「なぜ必要か」という点をしっかり説明できなければ、通さなかった
・1日3時間のリーダー研修を月17回も行った。カリキュラムは自前で
・国際路線の担当者は「サンフランシスコ空港のラウンジの水道代から、オーストラリアでカンタス航空に借りているラウンジの人件費まで、頭に入っている」とという。細かいデータの把握によって、常に必要な対処法を考えることができる

他にもエキサイティングなエピソードは多々掲載されているので、ご興味ある方は是非、ご一読ください。