借り

多くの人に借りを作りながら生きているなぁ、と思った。というのも、先日、「借りはすぐ返さないこと」という話を聞いたからだ。
たとえば、先輩に食事をごちそうになる。礼は早くが良いと思い、帰り次第、菓子折でも送ってしまう。翌日にそれが届く。もらった方は、「そんなに借りを早く返したいのか」と思ってしまう。借りは時に時間をおいた方がいい。
そんな話を聞いた。
そういうこともあるかもしれない。人生は貸し借りで出来ている、という話を聞く。または、「人に借りを作ることで、新しい関係性を作る」というコミュニケーション手法も聞く。たとえば、名刺交換をした人がいる。その人に「○○さんご存じですか。紹介して頂けませんか」「○○について教えて頂けませんか」と伺う。応えてくれると借りができる。そうすれば、借りを返す口実が生まれる。食事でもいいし、何か仕事でもいいだろう。そうして、本来ならば繋がらなかった点と点が線となる。そのような話だ。
ある人が過去に言っていた言葉を思い出す。もう3年以上も前だろうか。
その人と久しぶりに六本木で食事をした。話の流れとして説明するならば私にとっての異性。肉を食って、お酒を飲んで、終電の時間は過ぎた。そして先方はタクシーで、私は歩いて帰ろうとする。六本木まで出向いてもらったのはこちらだったから、タクシー代を出そうとする。そこでその人はこういう。「借りは作らないから」と。
なるほど、そういう考え方もある、と思った。
そのように男女の関係も貸し借りという概念はあるのかもしれない。私は異性になったことはないからわからない。ただ、誰かからか聞いたが、夜の世界では、食事3回が何かしら1回のバーター取引となっているというような。まぁ、それは貸し借りの概念というよりも、「3回も食事いっているわけだから」という名目的な意味合いが強い貸し借りかもしれないけれど。
貸し借りで言えば、ピエールブルデュー先生の社会資本の話を思い出す。私が歪曲して記憶している可能性もあるけれど、彼にとって、ある種の「優れた」人というのは、社会に借りを負っている。彼は自分が優れているから優れていただけに限らず、親や近所、地域、友人、教育などといった社会からの恩恵を受けて彼がいる。そのため、彼はしかるべき形で社会に責務を返さなければいけない、といったような。端的にいえば、ノブリスオブリージュに近いのかもしれない。
あるいは、名作「リアリティバイツ」を思い出す。
その映画の中でイーサンホークは、本屋でバイトをしている。しかし、合間に本屋の商品であるチョコバーを食べていた。それを、店主が見つけて彼を首にする。そこで、主人公のウィノナライダーは彼に「なんでそんなことをしたのか?」と問う。そこでイーサンホークはこう応える。

「チョコバーは俺に貸しがある」と。

真意はわからないけれど、そういうこともあるのかもしれない(なお上記のシーンは映画では1ショットで表示されていた気がします)。
そういえば、僕は誰かに傘を借りたままだ。傘の季節がもうすぐ終わるというのに。

借り」への3件のフィードバック

  1. abebe

    「借り」・・・。三四郎(夏目漱石)を思い出しました。
    っていうかお元気かしら?

    返信
  2. busynary

    いつも楽しく拝見させていただいております。
    村上春樹好きの原田さんの「1Q84」評をお願いします。気になります。

    返信
  3. 原田

    >abebeさん
    御無沙汰してます!元気しております。夏ですし!
    三四郎とは懐かしいですね。最近、草枕、こころなどはよく耳にしますが、三四郎は一度読んだっきりです。でもなんか面白かった機がしますので、いつか再読します。温泉とかで読んでみたい。
    コメントありがとうございます!
    >busynary
    コメントありがとうございます!
    春樹の件、かしこまりました。これから書いてみます。
    今後も何かあればリクエストくれると嬉しいです!定常的にネタ不足ですので!

    返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です