またいつか会う日までという言葉の。

友人の話。男。

仲の良い女性がいて。いわば恋人同然で。かれこれ長くて。で、「なんでつきあわへんの?」と聞いたらば。

別れるのが嫌だから。

 と言った。

彼にとって付き合うということは、別れのエンゲージメントなわけである。そういう考え方もある、と思った。

確かに故人が言ったように「出会いがわかれの始まり」だかなんだかいう名言も会って。あるいはある偉人は「さよならだけが人生さ」と言った。

そういう見方もある。

ただ、基本的には、人間の人脈ってのはある程度の不可逆性を持つのではないかと思った。たとえば人生で「はじめまして」と「またいつか」という言葉、どちらの方が多く言っているかを考えれば、前者のほうが圧倒的に多い。

それは1つは「いちいち、別れの挨拶はしない」という人間の心理もあるだろう(恋人同士の関係でない場合の話)。たとえば、それこそ世界では一期一会の出会いも数多くて。クラブだの、合コンだの、パーティだので知り合う人と挨拶や名刺交換、連絡先を交換しても、その人たちと再会する可能性は、船場を歩いていて知り合いと合う確率よりも低い。このメタファーの意味は「会う人はむちゃくちゃ再会するだろうけど(船場に住んでいる人)、そうでない人は、そうでないのだ(船場に住んでいない人)」。ということである。

ということ、知らない間に、我々は無数の「また次の世で会えたらいいね」を繰り返していることになる。もっとも、これはドラマチックに解釈しているだけで、実際のところは「1度会いました。」みたいな。よくわからんけど、まぁそういうことだ。

確かM.Harukiはこう言った。

僕は眼を閉じ、耳を澄ませ、地球の引力を唯一つの絆として天空を通過し続けているスプートニクの末裔たちのことを思った。

彼等は孤独な金属の固まりとして、さえぎるものもない宇宙の暗黒のなかでふと巡り会い、すれ違い、そして永遠に別れていくのだ。交わす言葉もなく、結ぶ約束もなく。

そういうことである。

それに感傷的な情緒の入り込む隙間は原則としてない。なぜなら単なる確率の問題だからである。

「君と逢えたのは奇跡だよ」という手垢にまみれた言葉がある。

それは真でもあるが偽でもある。つまり、その人にとって、その人に会えたことは奇跡だと認識するかもしれないけれど、確率としては、その人がその人でなかったとしても別の誰かには会うだろうし、その人が、今の人と比べて奇跡的であるかないかは相対的に比べることができないので、それは反証できない。ゆえに、奇跡と考えたところで害はないけれど、確率から考えれば、非常に意味をなさない言葉である。

つまり、その論法を使うならば、あなたにとって出会う人が全て奇跡になるわけだし、逆に考えれば、会わなかったことも奇跡たりえるわけである。もっとも、こんなのの意味づけは主観なわけで、いつかも書いたけど、単なるラベリングの問題である。

で、何が言いたいかというと、「こんな人に会えて、なんて世界は奇跡だ」と思うのは勝手だし、それは誰も否定できないけれど、では、その分、会えなかった人の代償は誰がとるのか。かわいそうじゃないか。その確率(つまり起こらなかった事象)に目をつぶるのはフェアじゃない。フェアじゃないけれど処世術であり、そんな確率を考えていたら日がくれてしまう。

そこで、今おもいついたのだが、つい先日書いた「選択肢」の問題も同じことだと気付いた。つまり何かを選択するには、選択肢を全て列挙しないといけないけれど、全部の選択肢はそのそも検討することができない。RPGのように箇条書きになっているわけではないのである。すると、上記を考えると結局、程度の問題か、あるいは生き方の問題になったi don give a shitとなるわけである。南無

でも、また飛躍するけど、「精子って何億もいて、その中で1つ(場合によってはmore)だけが受精するなんて奇跡ね」というこれまた色々なものにまみれたフレーズがある。

それは命題としては、やはりナンセンスで、どれか1つが受精することは確率論としてはなんら奇跡ではない。そして、その1つがたまたま自分だと考えることで、1/億と考えるのは自由だけど、これは「受精した人しか考えられない」ということを考えると、考えられる人=奇跡だと思える人全体、となり、すわなち「部分」=「全体」というベン図の崩壊に繋がるわけである。南無

で、いわば、昔どっかで読んだクイズ。

「あるカジノのルーレットで予想屋がいた。その人のいう事を聞くと10回ともあたった。その予想屋はどのような手口を使ったのか?」

というような話。答えとしては、「2の10乗分の人に声をかけた」が正解。有名な話だけど。宝くじバージョンとかもあるね。実際にあった話らしいけど。

つまり、2人に声をかけるとする。1人に「次、奇数くるよ」、もう1人に「次、偶数くるよ」といっておく。そうすると、100%、どちらかは正解するわけである(0、00の場合は考慮せず)。では4人に声をかけて同じ方法を使うと1人においては「2回ともヒット」するわけである。で2の10乗、1024人に声をかければ1人は「10回連続成功」となるわけであります。

つまり、さっきの問題と似た話。

あ、これと似た話しで「悪いことは立て続けに起こる」というジンクスも全部確率論である。これも以前書いた気がするなぁ。

つまり、悪いことってのは1日に1回くらい起こっている。で、それは起きているじかn18時間のうち1時間起こるとする。そうすると、18日に1回は1時間の中で2回悪いことが続くわけである。人間としては毎日「単発で起こっている悪いこと」はすぐ忘れる。でも、18日中1回起こったことに関しては「まれな体験だから強く印象に残る」。たとえば、さらに18の2乗、324日に1日は悪いことが3回続くわけであるよ。で、これも強く印象に残る。云々。

これってなんだっけ、経済の新しい学問、ここ10年くらいの。ノーベル賞を5年くらい前にとった奴。度忘れしたけど、その辺では当たり前の話だけど。TIMEの表紙に野球選手が出ると、その後成績が悪くなるジンクスとか。

で、何がいいたいかというと、でも、やっぱり別れって寂しいよね、ということである(違 。

そうだ。なんでこんなことを書いたかというと、先日(敢えて日にちをぼやかしたのは他意はない)、ある六本木の飯屋で飯を食べていると、偶然、ナオト君に出会ったからである。

で、個人的には、外で人と再会することはあまりないので、「すげー偶然」とかテンションあがったわけである。で、確率から言えば、上記のように不思議ではないけれど、人間は確率だけで生きるにあらず。物事に色を付けたがる。

これは何かの予兆。すごい偶然。と、テンションがあがる。実際、「たまたま偶然再会」ってのは、なんか凄いテンションあげるよ。どうでもいいけど。

あ、さらに思い出した。ユーキとの再会。これはどこぞでも書いたけど。彼と初めて会ったのは、ジンバブエ。同じ部屋になった学生。で、聞いたら同じ大学。同じ学年。彼も休学中。で、意気投合でビリヤード。

そして、偶然再会したのがハンガリー。彼がマラリアで退院した後。またまた同じ宿になった。で、その後、ニースのマクドナルドでも偶然再会。あと、パリとかアムスとかでも会ったけれど。まぁ、あれはなかなか凄い再会ではないかと思うけど、旅人はよく再会する。なぜなら宿が似てくるから。ルートも似るから。まぁ、それはそれでいいか。

しかし、あれだ。イタリアのローマで友人と待ち合わせしたときは往生した。僕は東アフリカをざくざく縦断していて、その人はブラジルのアマゾンにいた。で、待ち合わせはおおよその日程とローマの宿だけ決めていた。で、いざローマにつくと、その人がアマゾンで赤痢になって、先にローマについていた。で、日程があまったのでその人はチュニジアに突発的に旅立った。で、僕は物価の高いローマにいるのも面倒だったので、チュニジアに移動した。しかも、船の関係で、いちいちシチリアまで下りて。するとフェリーがまだでないとかいうから、シチリアで陥没で、チュニスについたころ、その人はチュニスから、わけのわからないスターウォーズの山を見に行った。で、チュニジアの首都のチュニスで待ち合わせた宿も空いていない。で、そのころ僕は、その人が山にいってるなんてしらないから、すれ違いになったんだ、と思って、急遽、船に戻る。すると、その船は、イタリアじゃなくて、マルタ行き。いきなりマルタに上陸。で、いろいろトラブったんだけど略。で、しかも、間違えて、ヴェニスまで行ってしまう。そして、ベニスからローマに戻ってメールを見ると、まだチュニジアとか。あほか、とで、しょうがないのでナポリで時間つぶしていると・・・云々。あれは大変だった。

まぁいいや。

で、まぁ、そうなんだよ。

だから、何が言いたいかというと、1度会った人、あるいは意気投合できた人ってのはかけがえのないもので、それは大切にしたいですよ、と僕もそう思っているわけで。

で、別れ言葉の「また」とか「Hasta luego」とか、よく考えたら、ものすごくトートロジーで。

つまり「また(会う日まで)」とか「Hasta Luego(また会うまで:直訳)」とかって、当たり前といえば当たり前で。なぜなら会うまでは、会わないのだから。つまり、死ぬまで生きる、という言葉と同じで。

もっとも、この反復が意味を産むのも事実である。つまり小林秀雄の「その春は、まさに春だった」という名文と同じです(秀雄さんだったっけ?)。

ということで、Adios hasta luego。

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