「あれに乗ってたらいずれ負けていた」とは、友人の言葉である。この言葉の深みを日々、感じる次第で。
どのような文脈の言葉だったかというと、ポーカーテーブルでの言葉だった。
彼女は日本のトップ20位に入ったくらいのポーカーランカーで、とてもうまい。そして、僕は彼女にポーカーを教わりながら、六本木のポーカーバーでポーカーをしていた。
そこで、僕がおりたゲームで、彼女が「Call(勝負する)」か「フォール(降りる)」かを悩む場面があった。つまり、彼女の手にはそれなりに強い手がある。しかし、他のライバルは強気でレイズ(掛け金をあげる)をしてくる。彼女は、そのライバルより自分の手が強いか、弱いかを判断する必要があった。
そこで彼女は計算をする。自分の手札で、ライバルに勝てる可能性を計算する。おそらく、確率は5割より少し低いくらいだったのだろう。悩んだ末、彼女は降りた。
そして、その後、場にカードが開かれた。結果的に、彼女が勝負していれば勝てた試合だった。しかもかなりの金額を。
しかし、それに対して彼女はこういうのだ。
「あれに乗っていたら、今回は勝てたかもしれないけど、いつか負けていた」と。
つまり今回は40%の勝率がたまたまうまくいって、勝てる試合だった。しかし、そんなかけを100回繰り返せば、必ず負ける結果になる。そういうことだ。
重要なのは「自分のスタンスを崩さないこと」である。
これは、過去に別の人からも教わった。僕が、FXをしていて、去年の大統領選で勝負をしていた時だった。データに基づけば、クリントンが負けるはずがなかった。トランプが勝つハズはなかった。
しかし、結果は歴史がみた通り、トランプが買った。僕は大損をこいた。
ただ、僕は「確率をもとめて勝てると思ったから、Callした(勝負にのった)」のである。そのスタンスを表して先輩は「まぁ、そういうこともあるよ。そのスタンスでいればいつか勝つ」と言ってくれた。
つまり、自分のスタンスが正しければ、今回は負けたとしても、いつかは勝つ。
今回のCoincheckの事件もそうだ。今回、僕は少額をCoincheckに入れていた。それが0になるかもしれない。
しかし、自分の仮想通貨に投資している金額の一部しか入れていなかった。そのため、多少のダメージは受けるが致命傷ではない。
これがポートフォリオということだ。普段、オール・インで特定の仮想通貨に入れていると、10倍や100倍になって億円を稼ぐ人もいる。しかし、その反面、そのかけに失敗すると0になる可能性もある。
賭け事というのはそういうことだ。いっときだけなら勝つことはできる。しかし、勝ち続けるには、きちっとスタンスとポートフォリオを組まなくてはいけない。
今回、僕は昨年末の儲けで、Coincheckでの儲けは限定的だったが、その分、今回のダメージも限定的だった。そういうことだ。
人生は1週間で終わるわけではない。80年続くのである。そう考えると、今回たまたまかっても、次に勝てるかわからないような勝負はしてはならない。
今後、想定される最悪のシナリオが怒っても、生きながらえるような勝負をしないといけない。
今回の事件を見て、彼女の言葉の重みを改めて感じるのである。