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読書レビュー:稲盛和夫 最後の闘い

久しぶりに読書レビューを。

稲盛和夫 最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生
大西 康之
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 36,199

評価:★★★★

会社の尊敬する方に進められて読んだ一冊。稲盛さんの本は自伝的なものは読んでいたが、こちらは未読なので拝読。

JALの再建を託され、いかに彼がそれを受け、戦い、そして勝ち抜いたかが記載されている。2010年にJALの会長に就任し、2013年3月31日までの1155日の戦いだ。会社更生法の適用を申請した時の負債総額は2.3兆。会社更生法の適応会社が再上場した割合は7%のみ。そこから2012年には2049億円の営業利益を産み、再上場をさせた。結果として、彼はJALを再建させた。ある種の奇跡とも言える事をなぜ成し遂げられたのか?

いくつかのポイントがあるにせよ、マクロな観点でいえば「社員の考え方を変えさせた」ということなのだろう。3万人もいる会社ゆえに、何人かが考え方が変わっても、物事は変わらない。そうでなく、3万人全員が考え方を変えるということを行い、物事は大きく動く。しかしながら、当然、考え方を変えさせるというような容易ではない。人は今までのやり方を踏襲するし、何よりパラシュートで上から降りてきた人の言うことは人間心理として聞きにくい。しかし、フィロソフィーや彼自身の働き方、個々の仕組みを変えることによる考え方へのインパクトなどあらゆる手段を通じて、彼はそれを実現した。それが、この改革の真骨頂だろう。

その考え方を変えさせた仕組みの1つがアメーバ経営という仕組みである。組織を1リーダーが見れる範囲(アメーバ)まで分類し、リーダやメンバーはその単位の数字を徹底的に把握する。そして、メンバー全員が「今日はもうかったかどうか」を把握する。それによって、メンバーは自分の考えで試行錯誤をすることができる。また、事業自体も自分ごと化できる。なお、この「数字の管理システム」の構築は、非常に難易度の高い仕組みであり、京セラでその仕組を立ち上げた担当者がJALにも参画した。

そしてアメーバ経営に欠かせないもう1つの仕組みが「ミッションや戦略、行動計画の明確化」である。そのような指針がなければ、メンバーも「どういうステップでどうすれば数字を達成できるか」が全社観点で最適なものとならない。個々の単位にミッションが明確にあるからこそ、あとはトップダウンではなく個々で動いても全体での齟齬がでない。ゆえに、個々の単位で機動的に動くための指針がミッションである。アメーバ経営は、この小規模な組織とミッション単位の明確な戦略、そして、正確な予実管理システムによって成り立っている。それによって、メンバー全員が「どうすれば目標を達成できるか」ということを考えられる自律的な組織が実現する。

この仕組は聞いただけだと「ふーむ」という印象だが、実際にそれが稼働している世界を見ると「なるほど」と腹に落ちることが多い。KDDIの強さの一端をそこに見ることができ、アメーバ経営の凄みを実感する日々。

最後に彼のエピソードをいくつか
・予算として承認されている10億円の予算執行を拒否。たとえ、それが予算として通っていても、担当者が「なぜ必要か」という点をしっかり説明できなければ、通さなかった
・1日3時間のリーダー研修を月17回も行った。カリキュラムは自前で
・国際路線の担当者は「サンフランシスコ空港のラウンジの水道代から、オーストラリアでカンタス航空に借りているラウンジの人件費まで、頭に入っている」とという。細かいデータの把握によって、常に必要な対処法を考えることができる

他にもエキサイティングなエピソードは多々掲載されているので、ご興味ある方は是非、ご一読ください。

「市議会議員に転職しました」が多くの人に読まれることが大切だと感じましたー

大学時代からお世話になってる遠藤さん(遠藤先生が書籍を上梓されましたん。おめでとうございます!

市議会議員に転職しました。: ビジネスマンが地方政治を変える
伊藤 大貴 遠藤 ちひろ
小学館
売り上げランキング: 14,639

冒頭で以下のように書かれています。

l地方議会にもっと若手議員が増えれば、自治体に持続可能な経営感覚を持ち込むことができるはずです。市議会議員の8割が50歳以上というニッポンの現実。市民の代表者たる議員たちの年齢が、実社会の年齢バランスと著しくかけ離れていることは健全とはいえません。生活にいちばん近い地方自治体の議会にこそ、もっと若者世代が必要なんだというのが一つめに届けたいメッセージです。

つまりこの本は自伝といったニュアンスよりも「もっと若い人に市議会議員になってほしい」という目的のために書かれているものです。

そのため
・実務内容
に限らず
・どれくらいの給料か
・どういう流れで当選するのか
・どうしたら慣れるのか
といったことが率直に書かれています。

おそらくその意図を反映して、本のタイトルも「市議会議員に転職しました」というものになっているのだと思われます(転職という概念でパッケージング)。

文章も、論理的に分析されており読みやすく、同時に生々しいです。たとえば、「会議で使われる業界用語」などは笑いながらも、その生々しさに笑いも収まってしまいます。

内容は、特に「ビジネス経験が活きる」という点が強調されており、この本を読んで「市議会議員を目指そうかな」と思う人は少なくないのではないかしら、という印象を受けました。

言うまでもなく、今の「選挙者」が若い世代が少ないのも問題だとは思っていますが、同時に「被選挙者」も若い世代がいないことは大きな問題です。同時に、ビジネスセンスを入れて行政を行っていくということも非常に重要だと思われます。そのため、この本が売れて、若い世代&ビジネス感覚をもった人がもっと市議会議員になるということは、非常に健全なことであるかな、と感じた一冊でした。

心理戦の応酬小説「スリーピングドール」を読んだ

最近、洋物を読むことがブームなので、スリーピングドールを読んだ。

概要はとしては

他人をコントロールする天才、ダニエル・ペル。カルト集団を率いて一家を惨殺、終身刑を宣告されたその男が、大胆かつ緻密な計画で脱獄に成功した。彼を追うのは、いかなる嘘も見抜く尋問の名手、キャサリン・ダンス

である。ダンスさんは「人間の所作や表情を読み解く「キネシクス」分析の天才」という位置づけ。

ゆえに、内容は心理戦の応酬。くわえてドンデン返し。

スリーピング・ドール〈上〉 (文春文庫)
ジェフリー ディーヴァー
文藝春秋 (2011-11-10)
売り上げランキング: 61,267

いくつか引用箇所をピックアップ

「オルガンの音栓をいっぱいに弾いてね(全力を尽くせ、という意味)」

「思います」という言葉は尋問官にとっては重要な意味を持つ。それは、たとえば「記憶にない」とか「たぶん違う」といった表現と同じように、否定の段階にあることを示すフラグだからだ。言い換えればこういうことになる。「曖昧な言い方はしていますがはっきりノーと断っているわけではありません」。

「帰ったら電話する」キネシクス分析のスペシャリストであり経験豊かな尋問官であるキャサリンダンスは、人は見破られることがわかっていて、時には見破られることを期待して、嘘をつくことがあるという現実を知っている。その代表例がこれだ。

ミレニアムを読んだ

先日、ミレニアムを読んだ。

久しぶりに、いわゆる「寝食忘れて」没頭して読んだ本だった

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーグ・ラーソン
早川書房
売り上げランキング: 10,792

全3シリーズの6冊(文庫本)。スウェーデンの本で、第一部は映画化もされたので耳にされたことのある人は多いのではないか。

残念ながら、作者は出版の日を待たずに他界をしてしまった。そのため、当初に想定されていた第四部と第五部はもう読むことはできない(メモは残っているらしいのでそこから作成されるかもですが)。しかしながら第三部まででも十分に話は完結しているので楽しめる。

ただスウェーデンの名前がわかりにくく(覚えにくく)、その点は苦労した。

いくつか引用をしようと思ったが、線を引いたところがほとんどNSFWだったので、当たり障りのない以下を引用

「あなたはおいくつ?」
「40過ぎです」ミカエルは笑って答えた
「ということは、ついこの前まで20歳だったわけね。まったくなんて早く過ぎるんでしょうね。人生って」

風立ちぬ

機会があり、ジブリの新作、風立ちぬを見た。

この映画は、なんとも感想を言いたくなる、ないし、かきたくなる映画だ、と思った

良い映画はそれだけで独立して存在するが、ただ、同時に人とのコミュニケーションを促進する映画も、また良い映画である

前者は、たとえば、ショーシャンクやエターナルサンシャインであろうし、後者はたとえばユージュアルサスペクツやパルプフィクションであろう。

往々にして、後者の映画は、人の想像によって完成される作品である。そこには謎があったり、あるいは解釈が求められる

人はそこに意味を持たせたがる。それゆえに、その映画はまさにメディアの文字通り、媒体となって人の口を渡り歩く

この映画も、他のジブリ作品と同じく多くの隠喩や伏線がはぐらされていたという点では同じだけれども、それ以上に「どこに着眼するか」という点が、多く用意されている映画であったように思う

それは恋かもしれないし、飛行機かもしれない。あるいは、そもそもこの映画の試みかもしれないし、ないしは、サブキャラの存在感かもしれない。あるいは重ねられた歴史かもしれないし、ないしは声優かもしれない。それゆえに、ネット上でも数々の侃々諤々の議論が見受けられるのであろう、と思う

いろいろなとっかかりがあり、見ているうちは、それがなんとなく喉に引っかかったサバの骨のごとく違和感として残るのだけれど、それゆえに、映画の後では、これに関して誰かと話をしたくなる、というような

僕の場合は言葉だった。この映画に使われているいくつかの言葉の意味がとても引っかかり、それが後にも残った。

なぜ、そこでその言葉を使ったのか、ないし、「風立ちぬ、いざ生きめやも」という堀辰雄によって素晴らしい日本語に訳された「Le vent se lève, il faut tenter de vivr」の意味合いであったり(蛇足ながら、ヴァレリー自身(テスト氏)に私が学生時代になじめなかった作家なので、そういう意味では、ヴァレリー自体が、喉に刺さった骨である)

そういう点でこの映画は、良い映画だな、と思った

何も起こらない小説「国道沿いのファミレス」

ああ、この本は間違いなく面白いな、と確信を持って手に取る本が年に数冊ある

そのうちの一冊が「国道沿いのファミレス」だった。

この勘はどこから来るのかよくわからない。一つはタイトルの妙味だと思う。タイトルが刺さる本は間違いなく中身も刺さる

過去にタイトル買いをしてヒットした本としては「僕のなかの壊れていない部分(白石一文)」「夜の果てまで(盛田隆二)」「水曜の朝、午前三時(蓮見圭一)」「永遠の1/2(佐藤正午)」などが思い返される。

しかしタイトルだけでなく、出版社、装丁、帯なども加味されて、その勘は動いているような気がしないでもないけれど、いずれにせよ、そういう勘に引かれて、この本を手に取った

結果、久しぶりに面白い小説を読んだ(正確にいえば前回面白いと思った本よりも4冊のピンとこない本を得て当たりを引いた)

とはいえ、これは、好きな人と嫌いな人にわかれるだろうな、と思う。いわゆる「村上春樹的」なものが好きな人が。より詳細にいえば「本多 孝好」や「中村 航」が好きな人には、刺さる本だと思われる

何も取り立てて大きな出来事が起こらない日常。ただし、その描写とメタファーやアナロジーがぐっとくる、といったような

当方、読書をする時は、好きな一文をラインをひいていて(そういう意味でKindleのなぞるUIは、ペンで線をひくよりも少し時間がかかってストレス)

で、今調べると10ページほどにラインが引かれていたのだけど、どの箇所も、その1文だけひっぱると非常に語弊があるような一文ばかりで。

ということで、久しぶりに本の紹介まででした

国道沿いのファミレス (集英社文庫)
畑野 智美
集英社 (2013-05-17)
売り上げランキング: 26,009

今すぐ読める!Kindleで購入できるオススメの長編小説まとめ(15作品)

けんすうの「今すぐ読める!Kindleで購入できるオススメのマンガまとめ(17作品) 」という記事にインスピを受けて、長編小説版を書いてみたいと思います

長編小説は、紙で買うと蔵書でかさばるし、旅行にもっていくにも重いですが、Kindleなら安心。いまこそ、読むチャンスであります!

※「全N部」は、目算なので間違いがある可能性があります
※ 読んだものをピックアップしているので、読んでいないのは触れられていませんのでご容赦ください(たとえば平家物語とか)

森博嗣:S&Mシリーズ(全10冊)

すべてがFになる THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)
講談社 (2012-09-28)
売り上げランキング: 112

S&Mシリーズですが、SMは一切関係ないのでご容赦ください。大学教授で推理小説かの森さんのデビュー作。

推理小説好きな方は良いのではないでしょうか。今後のVシリーズや四季シリーズとかとも繋がっているという意味では、10冊以上のシリーズがあります

吉川英治:三国志(全7冊)

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)
吉川 英治
講談社
売り上げランキング: 6619

三国志といっても、いまや「横山光輝」版「北方謙三」版もありますが、王道としては、やはり吉川英治。

諸葛孔明、泣けます

北方 謙三:水滸伝(全19冊~)

水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)
北方 謙三
集英社
売り上げランキング: 52946

最高文学の1つ「水滸伝」。涙なしには読めません。最近回りで読んでいる人をちらちら耳にする、何かで流行っているのかな?

これの続編である楊令伝も無事完結。そして最後の「岳飛伝」が執筆中という壮大な物語。

ドストエフスキー:カラマーゾフの兄弟(全3三冊)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー
光文社
売り上げランキング: 2723

ロシア文学では「罪と罰」と双璧をなすお約束のシリーズ(プラス「アンナカレーニナ」)。兄弟全員の名前がいえれば、あなたも立派な村上春樹ファン

白眉と呼ばれている「大審問官」のパートだけでもいかが。

山崎 豊子:不毛地帯(全5冊)

不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))
山崎 豊子
新潮社
売り上げランキング: 13197

山崎豊子先生の代表的作品の1つ。最近はドラマ化もされたのかな

シベリアから商社マンへいたる壮大なお話

石田 衣良:池袋ウエストゲートパーク(全11冊以上)

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)
石田 衣良
文藝春秋
売り上げランキング: 22179

通常IWGPだっけ。テレビ化もされた石田衣良さんの代表的作品

恋愛あり、謎あり、泣きありの素晴らしい小説群

京極 夏彦:百鬼夜行シリーズ(全14冊~)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)
京極 夏彦
講談社
売り上げランキング: 3866

推理小説。妖怪関係のタイトルがついているけれど、別に妖怪小説ではない

トリッキーな登場人物たちのめくるめくパラダイス

大沢 在昌:新宿鮫(全10冊以上)

新宿鮫 (光文社文庫)
新宿鮫 (光文社文庫)

posted with amazlet at 12.11.25
大沢 在昌
光文社
売り上げランキング: 5218

大沢さんのハードボイルド小説。警察が主人公。こういう設定が好きなら良いのではないでしょうか。

新宿鮫の名の通り、新宿が舞台になっている(けど、新宿関係ないことも多い気がする)

伊坂 幸太郎:オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 3586

オーデュボンの祈り は、これで終了だけど、伊坂氏の小説は、全て繋がっているので、そういう意味では、シリーズの1つとしてピックアップ

この一冊でデビュー。個人的には「重力ピエロ」の方が好きではありますが。

奥田英朗:精神科医伊良部シリーズ(全3冊~)

イン・ザ・プール (文春文庫)
奥田 英朗
文藝春秋
売り上げランキング: 2841

精神科医をテーマにした小説。なんだか、楽しく読んだ記憶はあるけど、あんまり覚えてない

浅田 次郎 :蒼穹の昴(全4冊~)

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)
浅田 次郎
講談社
売り上げランキング: 11943

ポッポ屋、浅田さんの代表作の1つ。清の時代をテーマにした歴史小説。「珍妃の井戸」とかも続編にあたる。

「成長小説」の王道とでもいうのでしょうか。少年が運命の寵児として活きていく様は圧巻

垣根 涼介:ヒートアイランド(全4冊~)

ヒートアイランド (文春文庫)
垣根 涼介
文藝春秋
売り上げランキング: 33355

ヤクザとか「ギャング」とか、そういうドンパチ系の話。タランティーノ好きな人には良いかと思うのですが、いかがでしょうか

筒井 康隆:家族八景(全三部)

家族八景 (新潮文庫)
家族八景 (新潮文庫)

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筒井 康隆
新潮社
売り上げランキング: 4766

筒井康隆先生のSF小説。人の心が読める女性が主人公。

3部作なのだが、三冊目の「エディプスの恋人」はKindle化されていないという片手オチ(理由は想像できるけど)。

林 真理子:バブル三部作

不機嫌な果実 (文春文庫)
林 真理子
文藝春秋
売り上げランキング: 204032

バブルの時代の恋愛を描き取ったお話。この「不機嫌な果実」はドラマ化もされていたかと

三部作の割には「ロストワールド」「アッコちゃんの時代」はKindle化されておらず、待ちですね

藤原 伊織:テロリストのパラソル (全二冊)

テロリストのパラソル (講談社文庫)
藤原 伊織
講談社
売り上げランキング: 52480

全二冊ですが、どうしても入れておきたかった氏の本。

「テロリストのパラソル 」と、その時系列的続編にあたる「シリウスの道」。大好きな作家でしたが、2007年食道癌で他界。よって、これ以上、この続編はでません

2010年面白かった小説10冊

さて、年末なので今年読んだ本のおさらい。

バックナンバーは以下。

母数として、今年読んだ小説は100物語、前後。移動が多かったので(海外/大阪等)、その時に5~10冊をまとめ読み、みたいな感じでした。

以下、記憶に残っている「面白かった」ものを並べてみました(記憶から墜ちているのも多そうだけど・・・)。傾向としてはやはり「青春系」「文章上手系(構成よりも)」に惹かれる模様。

10位:石田 衣良:愛がいない部屋

愛がいない部屋 (集英社文庫)
石田 衣良
集英社
売り上げランキング: 169118

私の中で「恋愛小説を読みたい時に手に取ってしまう作家」の位置づけである石田さん(辻仁成氏からリプレイス。女性版は山田詠美氏)。

これはマンションをベースにした短編集。

他にも今年は、40、オトナの片思い(アンソロジー)など相変わらず手に取ってしまう石田さんの本。

なお、上記は「マンション」を軸にしているけれど、吉田さんの「初恋温泉 (集英社文庫)」は温泉軸。

温泉がテーマの小説は珍しく、楽しく読めた。

9位:グロテスク:桐野 夏生

グロテスク〈上〉 (文春文庫)
桐野 夏生
文藝春秋
売り上げランキング: 7148

桐野さんの本は、いつも「読むの重い・・・」と思いながらも手を取らずに得られないという不思議な魅力を持っている。

内容も暗くてヘビーなのに、ぐいぐい読んでしまう。これはお嬢様校出身の女のコの堕落論的な物語。

正確に言えば、過去に話題になった東電OK事件を元にしている一冊。これが面白かったら会わせて「東電OL殺人事件 (新潮文庫)」を読まれることもオススメします。

なお、他にミステリーとしては「冷たい校舎の時は止まる (上) (講談社ノベルズ)」は楽しく読んだ。似たミステリーとしては「イニシエーション・ラブ (文春文庫)」もそれなりに面白かった。

8位:ザ・ドロップアウト:高崎 ケン

ザ・ドロップアウト (アルファポリス文庫)
高崎 ケン
アルファポリス
売り上げランキング: 278590

小説というか自伝。概要を引用すると

一流大学を卒業し、一流企業に就職。絵に描いたように順風満帆な人生…のはずだったのに、現実はどうだろう。金のために、夢や自由を捨てて、意に沿わない仕事に従事する日々。本当のオレはこんなじゃない!がつんと上司に退職願いを叩きつけ、新たな一歩を踏み出したものの、待っていたのは厳しい下流生活だった!ホスト、AV男優、テレビAD、バーテン、そして派遣社員としての地獄のような毎日…勢いに任せ退社した男が歩んだ屈辱と再生の道。―これは、もう一人のあなたの青春物語。

な感じ。高橋歩氏を少し髣髴させる(ベクトルが違うのであくまでも少しだけだけど)。

7位:虐殺器官:伊藤 計劃

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
伊藤 計劃
早川書房
売り上げランキング: 457

けんすうに教えてもらって読んだ一冊。

今は文庫化?され平積みになってますね。

SF小説で、ガンダム/エヴァ+ミッションインポッシブル/メタルギアソリッド的な。マッチョな一冊。

ただ、散髪屋のお姉さんに「おすすめ本は?」と聞かれて紹介したところ、それなりに楽しんで読んだそうなので、女性も好きな人はいるかも知れない(大きいくくりでは西尾維新に近い?)

ただ、夭折されてしまったそうで悲しい限り。

6位:アッコちゃんの時代:林 真理子

アッコちゃんの時代
アッコちゃんの時代

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林 真理子
新潮社
売り上げランキング: 364967

田口さんの記事きっかけで読む。

バブル期の女性が主人公(実在の話をベースに)。古き良き時代の六本木等の話も多く、なんだか切なく読んだ。

関連(六本木繋がり?)としては甘粕さんの「みちたりた痛み 」や家田さんの「縄張り―死の六本木抗争 (祥伝社文庫)」なんかも面白かった。

5位:月曜の朝、ぼくたちは:井伏 洋介

月曜の朝、ぼくたちは (幻冬舎文庫)
井伏 洋介
幻冬舎
売り上げランキング: 264494

青春モノ。学生時代の友人たちが30前後?になった時の物語。

転職あり、結婚あり、起業ありなどなど。自分との年齢の親和性からか面白く読んだ。

この作者の本は初めて。他何か有名なのあるのかな?

4位:夜は短し歩けよ乙女:森見 登美彦

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
森見 登美彦
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 2656

森見 登美彦氏は、2007年に「水曜の朝、午前三時」をピックアップして以来。

森見ワールド的な世界観と癖のある文章(パクチー的な)は、ハマルと楽しい。
※個人的には「四畳半神話大系」 はピンと来ず。

また、蛇足だけど、「歩く関連」としては、恩田さんの夜のピクニック (新潮文庫)、奥田さんの「真夜中のマーチ (集英社文庫)」はピンとこなかった。

なお、似た作風として揚げられることが多い万城目氏ですが、鴨川ホルモー (角川文庫)は個人な趣味ではなかったのだけど、話のネタにはちらちら出た一冊。映画化の関係かな?あとインパクトのあるタイトル。

なお、森見さんと舞台も文体もなんか似てると思ったらホゲホゲという話を聞く。

3位:ストーリーセラー

Story Seller (新潮文庫)
Story Seller (新潮文庫)

posted with amazlet at 10.12.26
新潮社
売り上げランキング: 11296

アンソロジーを選ぶことは滅多にないのですが、この一冊は印象に残っているため。

というか具体的には有川さんの「ストーリーセラー」が傑出。あと米澤穂信氏「玉野五十鈴の誉れ」 、ストーリーセラー2の「伊坂幸太郎の合コンの話」の3編が白眉。

2位:不毛地帯

不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))
山崎 豊子
新潮社
売り上げランキング: 36945

テレビ化された影響で読む(ドラマは見てないから解らない)。高度経済成長期の商社の話。

この影響で山崎氏の「沈まぬ太陽」「白い巨塔」「華麗なる一族」も読んだが、全てレベル高くて驚愕。

さすが元記者。ドキュメンタリーとして読める。今まで喰わず嫌いだったのを猛省。

1位:水滸伝:北方謙三

水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)
北方 謙三
集英社
売り上げランキング: 28047

ぶっちぎりの面白さで貪り読んだ。全19巻。

中国の「水滸伝」を下敷きにしてふくらませた一冊。ストーリーの面白さに加え、北方節が全快でぐいぐい読ませる。

氏の三国志も面白いが、水滸伝は三国志よりも自由に書いており、また三国志の経験を踏まえた文章が力強く、こちらがマッチベター。

梁山泊というと日本だと社名を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、これとそれは全く関係なし。慣用句でたまにでる「水滸伝」の元ですね。

ストーリーはWikipediaによると

時代は北宋末期、汚職官吏や不正がはびこる世の中。様々な事情で世間からはじき出された好漢(英雄)たちが、大小の戦いを経て梁山泊と呼ばれる自然の要塞に集結する。彼らはやがて、「悪徳官吏を打倒し、国を救う」事を目指すようになる。

108人が結集していく様子は、ギリシア神話からドラゴンボールなどにも流れている英雄奇譚的な骨子。

なお続編の楊令伝も最近、完了したとか。その後はさらに第三部もあるという長編。

本:とにかくすぐやる人の仕事の習慣

とにかくすぐやる人の仕事の習慣
豊田圭一
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
売り上げランキング: 1447
おすすめ度の平均: 5.0

5 すぐやることで仕事の質が上がる
5 ”すぐやる人”になりたい方必見

豊田さんが新刊を出されたそうです。献本御礼!
「すぐやる人」の代名詞である豊田さんのテクニックやポリシーなどの本。
冒頭にも書かれていますが、

すぐやるは性格ではなくスキルの問題だと思っています。

という言葉に哲学が集約されているのではないかと。
「時間とうまく付き合う方法」「手帳、メール、電話の活用法」「ネットワークを作る」といった風に生活全般のノウハウが書かれています。
ちなみに、実際、本書(と今までの著書)にもあるように、氏の「メールの返信速度」はチョっ早で驚くほど。こちらが送信してから、1分かかってない時もあるのではないでしょうか。
あと、本書で「まずは、他の人にできることをする」(いわばギブ&テイクのギブを最初に)という点が書かれていますが、実際に氏はそのようなスタンスで素敵!
このようなテクニックに興味のある方はどぞ!
※お詫び
>他に献本下さっている方々
まだ読めておらず申し訳ありません!!お恥ずかしい限りです。

2009年に読んだ小説 12冊。

さて。個人的に毎年行っている「その年に読んで面白かった小説」まとめ。5年目ー。
昨年は、ビジネス系の書籍に偏りまくったので、小説は30~40冊くらいしか読めていない気がします。ちなみに小説を読むのは、ほぼ電車の中のみ。
ともあれ、過去のは以下。あと今回も12冊ではないですが、12冊なのは仕様。それと、敢えてマニアックなチョイスにしてみました。

他の本に関しては以下もご参考まで。
» 読んだ本

6位:血と骨

血と骨〈上〉 (幻冬舎文庫)
梁 石日
幻冬舎
売り上げランキング: 154494
おすすめ度の平均: 4.5

5 金俊平 一人の男して憧れる
5 頭が下がります
5 凄まじい小説
5 身内にいたら嫌!・・・だけど憧れる自分がいる(苦)
5 読む者を圧倒する骨太の骨と、熱い血

映画化もされたので有名ですが。パワーみなぎる一冊。読んだの一昨年だっけな。
あと、以下も非常に勉強になりました。
» 闇の子供たち (読んだ本)

5位:眠らない女

眠らない女―昼はふつうの社会人、夜になると風俗嬢 (幻冬舎アウトロー文庫)
酒井 あゆみ
幻冬舎
売り上げランキング: 27496
おすすめ度の平均: 4.5

5 風俗嬢の来し方行く末
4 いやあ、勉強になります
5 ふたつの世界を生きる女性たちのお話

ノンフィクション。ドキュメンタリールポ。
酒井さんの本は面白い。大枠では似たジャンルの家田荘子氏の本も良いのではないかと。たとえば以下。あと「出張ホスト」とか。
» バブルと寝た女たち (読んだ本)

4位:無間地獄

無間地獄
無間地獄

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新堂 冬樹
幻冬舎
売り上げランキング: 242622
おすすめ度の平均: 5.0

5 暗黒ストーリー展開の妙。
5 金金金ば窶セい
4 これだけ真っ黒な暗黒小説も珍しい
5 スゴイ
5 劇画のような面白さ

ダークでダーク。裏社会系小説。
最近、小説ではこのような自分の知らない世界系やドキュメンタリ系の本を手に取ってしまう。上記の酒井さんの本とか、下記の歴史モノだとか。
他、似た系列では以下。
» 金王~池袋アンダーグラウンドの「光」と「闇 (読んだ本)
» 闇金ウシジマくん (読んだ本)

3位:浅田次郎

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)
浅田 次郎
講談社
売り上げランキング: 840
おすすめ度の平均: 4.5

5 近代中国をここまで面白く書けるとは。
5 浅田作品の最高峰!
5 こんなに夢中にさせてくれた作品は久し振りです。
3 後半が残念
5 時間を忘れます。

読み応えのある一冊。この人は文章がいい。そして、同時にたぐいまれなる人間味溢れたストーリーテラー。
お涙頂戴小説が有名だけど、歴史モノにも強し。

2位:1Q84

1Q84 BOOK 1
1Q84 BOOK 1

posted with amazlet at 09.12.29
村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 64
おすすめ度の平均: 3.5

3 中身があるような、ないような・・・
2 BOOK1の感想
5 構造的
5 「書きっぱなし」に対して
4 面白い方だと思います!

これもまぁお約束。
詳細は以下。
» 1Q84(基本ネタバレなし) (いけいけどんどん)

1位:三国志

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)
吉川 英治
講談社
売り上げランキング: 2136
おすすめ度の平均: 4.5

5 全8巻の読破もあっという間
3 入門者には不向き
5 三国志に神を見た
5 諸葛孔明
5 三国志には詩がある

正確には今年読んだのではなく、2008年の暮れ。読み終えるとしばらくは、三国志の比喩が抜けない。
諸葛孔明を知るならこの一冊。
そんな感じでした。