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最近、ドン・ウィンズロウブームが再来していたので、ウィンズロウの本を片端から読んでいた。
その一環としてこちらを読了。
公式紹介では
海兵隊あがりの冴えない泥棒ティム・カーニーは、服役中の刑務所で正当防衛のためにヘルズエンジェルズの男を殺し、塀の中にいながら命を狙われる身となった。
生きのびる道はただひとつ。ティムの容姿が、南カリフォルニアの伝説的サーファーで麻薬組織の帝王、ボビーZにそっくりであることに目をつけた麻薬取締局の要求を飲み、Zの替え玉となることだった―。
愛すべき悪党どもに、ミステリアスな女。波の音と風の匂い。気怠くも心地よいグルーヴ。ウィンズロウが新境地を切り拓いた最高傑作。
という本。こういう紹介で示される内容が好きでなければ、読んでも絶対に面白くないと思います。
私としては、本の内容よりも「ウィンズロウ流し」で読んだので、そういう意味では、相変わらず、紹介文にもあるような「気だるくも心地よいグルーヴ」がある本で、楽しく読みました。
ウィンズロウは、本のストーリーも王道の「悪を倒す」系の楽しいものですが、ところどころに挟まれるファンキーな表現が楽しい作家です。
たとえば今作でいえば、ジョンソンが「標的は27度の方向にいるので、射撃せよ」という伝言を伝えるように命じられた箇所では、
ロハースに二十七度と自分のけつの穴の区別がつくとは思えないが、ジョンソンは命じられたとおりにする
が、刺さりました。
あとは、気の利いた表現も多く、たとえば以下。
「その娘は死んだのか?」
「聞いたでしょ」
「何があったんだい?」
ローブの前をかきあわせてエリザベスが立ち上がる。
「自殺したの」そういって立ち去りかける。
「なんのために」ジョンソンはその背中に問いを投げる。
「もう生きなくてもすむように、でしょ」
また生粋のエンタメ小説でございました。